パンラビLOVE。
テレビ(ときどき映画たまにお芝居)斜め読み By 高橋晶

「パンズ・ラビリンス」。
あまり予備知識もなく。
スペイン映画は「海を飛ぶ夢」以来。

1940年代のスペイン内戦後のフランコ将軍圧政下。
この時代のスペインといえば、キャパの撮る世界。物語は主人公の女の子の妄想というか空想というか、まさに迷宮での試練を中心に進む。
それとほぼ同等に、軍部とゲリラの戦闘が展開するんだけど、後半はむしろそっちのほうがいよいよ凄まじくなっていって、主人公に課せられた3つの試練というのがどんなものだったか、合間うやむやになってしまうくらい。

指輪もないし、仲間もいないし、ホウキにも乗らないし、赤い靴もない。
まして、木陰で眠る夢でもない。
ああいった類のファンタジーを予想したら、みごとに裏切られる。
だって結末に達成感とか安堵感というのは一切ないわけだから。

いや、安堵感はあるか。
その後の、彼女が生きていくはずの世界が、さらに悪くなるであろうと予測できるだけに。
大それた志があるでもなく(出足ここは千と千尋と一緒)、現実と幻想をなんの違和もなく行き来して、しかも最後は自己の意志をみごとに表明し、彼女は迷宮を抜け出して、別の国の王女として、しっかり着地する。十分に残酷で切なく救われがたい映画なのに、確かに不思議な安堵感がある。
こういう映画をこういう手法で描くわけか。
CGを駆使しながら、胸のすく爽快感も、破壊的な開放感もなく、むしろ狭く深く内面に分け入っていく。
ハリウッドで同じものをつくったら、ああはいかないだろう。

作品の性格上、あまりうまく説明できないんだけど、いい映画です。
同級生と見に行ったんだけど、一人より共有できる人がいると安心できる。
大人の心にズシンと重い、けれど見終わって、決して不快でなく、むしろ心地よい焦燥感みたいなものが襲ってくる。

そういう意味ではファンタジーかも。