ゲイジツの秋、なのだ。
テレビ(ときどき映画たまにお芝居)斜め読み By 高橋晶

世田谷美術館「福原信三と美術と資生堂展」
先月、本社ビルの「映画の中の銀座」展を見てから、このところ資生堂がマイブーム、ってわけでもないけど、こうやって、仕事ぶりを網羅されると、改めてその企業ポジションの大きさを知る思い。
パトロネージュというんですかね、経済と美術が製品をはさんできれいに時代を主張する。
まったく境目がない。
企業人が文化人であり、親密な友好関係を築いて、互いの利益を気持ちよく尊重する。
母の鏡台の上に乗っかった化粧水だのクリームだののフタを開けて匂いを嗅いだ、そのときのドキドキ感には、明らかに、意匠に対する憧れも含まれていたはずで。
山名文夫って、すごい人だ。
写真見たら、デコルテから程遠い、地味ぃなおじさんなんだけど。

建長寺宝物殿ご開帳
東慶寺にSNSの知人が出店している「匠の市」をのぞきついでに。
年に一度のお宝を拝む。
さすが建長寺。
ここに来るといつも清々する。
お坊さん、皆イイ男。

シアタートラム「片づけたい女たち」
岡本麗、松金よね子、田岡美也子の3人が主宰するグループ・る・ばるの定期公演。
高校のバスケ部の同級生が50代になって、キャリアウーマンになった一人のめちゃくちゃ散らかった部屋を片付けながら、自分たちのまだ片付いてない人生を振り返る。
原作は二兎舎の永井愛。
一昨年の再演になる演出は木野花。
前回はセリフのやりとりがもっと攻撃的だったような気がする。
木野さんのほうが女性的でソフトな印象。
けど、3人の絶妙なやりとりは健在。
まさに50代の高校の同級生4人で観て、まー、身につまされる。
まだまだ片付かないけど、少しずつ片付けながら、前へ進んでいく。
エライぞ、健気だぞ、私たち。
後半は立ち見も出てたな。
共感できるもの。
ただしその分、小演劇好みのうるさいオヤジも増える。
身内相手にウンチク並べる前に、加齢臭をなんとかしてほしい。

「ALLWAYS 続・三丁目の夕日」
イントロが一番いいです。
できたばっかりの東京タワーをぶっ壊すゴジラ、ネタバレ覚悟で。
ま、ネタバレもないか。バレバレか。
CGの素晴らしさはよくわかりますので、そんなにひけらかさずとも。
それよりも、今後はストーリーに力を。
これは別の意味でトラさん化していくのかもしれないし。
思うに、小雪って、古いタイプの女性なんだね。
いえ、体型が。
資生堂展見たときも思ったけど。
あの時代の憧れのモデル体型。
バランス的にあり得ないってことで。
で、今あり得てる。だからバランス的には変。
顔もかなり。

国立劇場「通し狂言 摂州合邦辻」
歌舞伎は久しぶり。
国立の大劇場は初めて。
しかも通し狂言は。当たり前です。一日がかりですから。
「摂州合邦辻」は、馴染み深い演目かと思ったら、開場40余年で、まだ5回しか上演されてないとのこと。
今回は藤十郎の東京初の玉手御前だそうで、いわば凱旋記念(なのか?)、おかげで上方組が一家総出、俊徳丸に三津五郎。藤十郎はもちろん(顔でかッ)だけど、扇雀の浅香姫、きれいだったぁ。
もらった二階席券をたっぷり堪能。
大いに得した気分。
出どこはギリシャ悲劇でしょう。
そういや藤原竜也の「身毒丸」も再演だな。
また観たくなった。

21_21DESIGN SIGHT「water」
娘にすすめられて、打ち合わせの合間に見に行く。
ミッドタウンってこんなんなってるの?
一番奥のスペースが、わりと実験的に使われるみたい。
水をデザインするのは、時代的にもいいのでしょう。
こういうものは、昔(70年代)にさんざん見たわけだけど、なんだか当時よりさらっとしていると感じるのは、歳のせいか。
いや、時代のせいかも。確かに、なかなかに誠実で、いい展示です。

国立新美術館「フェルメールとオランダ風俗画展」
勢いで、美術館のはしご。
みごとに客層が違う。老若男女、あとからあとから。
「牛乳を注ぐ女」感無量です。
もう、みごととしか言いようがない。
徹底して庶民派にこだわるオランダ絵画も、やはり彼がいたからこそ脈々つづけられたんじゃないかと。
例によって、CGだの赤外線で分析されているのを見ると、画家の逡巡がよくわかる。
天才もこれほど迷うわけだ。
迷って迷って、あの構図と、あの描線。
息をのむ光の照射。遠近はずし。
淡々と苦悶しながら、描きつづる彼の日々が、胸に迫ってくる。
音声ガイドが500円と聞いて、そそくさと立ち去る学生たちも微笑ましい。
ミッドタウンはその日からクリスマスイルミネーション。
妙に夜空が低くなり、不思議な仲間意識が芽生える。
ここに来ている人、みんなフェルメールが好きなんだ。
なんでもいいけど、私はあの建物、好きですよ。
ビールがハイネケンだけというのはつまらんけどね。

国立演芸場中席公演
銀座でひと仕事終えて、まだ間に合うと思って招待券を引き換えに永田町へ。
中入り後の2本目から。
三遊亭笑遊の「時そば」。
枕で「ここについでで来る客はいない。しいて言うなら隣の最高裁に用事のある人」。
ホント、不便。
トリは春風亭小柳枝。
名跡だけど、当代のは聞いたことなかった。
人情ものが得意らしい。
「芝浜」。もう年末ってこと?ちょっと途中眠かった。
ほぼ満席。わざわざ来る人がこんなにいるなんて。
ヒトのこといえないけど。

11月も中席過ぎて、次は食欲の秋、ですかね。