u子の山陰便り 利休
第40回直木賞は「利休にたずねよ」だった。

第40回直木賞は「利休にたずねよ」だった。
島根に来てから茶道を学び始めた自称「茶人見習」としては気になる題名だった。
早速読んだ。
文章といい全体構成といいとらえ方といい斬新で読んでよかった。

千利休は秀吉の茶頭。
月刊penも今年の2月号で特集していてクリエイティブディレクターと持ち上げているが、簡単にいえばお抱えの「接待係主任」。天下人の秀吉の所には全国からの客が押し寄せる。
やっかいなことに武力を持っている人も大勢いる。
嫌っているのに従うようなふりをしながらやってきて、こっそり秀吉の目つきや態度を観察しては今後の動向を探ろうとする。
だから押しかけてくる客、反対に招く客、秀吉が嫌いな客などを刀も外に置いた茶室という小さい小さい空間で表情まで吟味しようかと秀吉はたくらむ。
その時、相手の人柄がどうなのか、そのためには「美意識をどう持っているか」が一つの指標で、興味津津だったのだろう。

茶の心はもてなしの心と「茶人見習」は日頃より師から稽古をつけられる。
もてなすからには、嫌いな食べ物は出すな、清潔な部屋に通せ、そして客が好む道具立てが要ると学んだ。
詳細にいえば和の集大成たる茶の道だから抹茶とお菓子と料理は当然、門から庭、待っているスペース(待ち合)、植木、蹲、光の加減や周囲の景色まで、一寸狂わず、しつらえよ、一期一会なりとのこと。
ただし、そうした緊張感がありながら、客には寛いで過ごして貰う。
ああ、大変!!である。

だが、茶にこだわりをもっている身は茶、利休、茶道具、和服、庭など興味は尽きない。
だから関連の本も雑誌も読むが、ずっと気になっているのは、秀吉と衝突して利休は切腹させられた後のことだ。
でないと、400年後に私は「茶道見習」になっていないのだから。こういう不肖の弟子が多い?ためか、京都の家元は弟子の育成のために講座を開いて数々の疑問に答えてくれる。