こうみそだて その1 「できた!」
多くのカップルの場合、計画通りに子ができることは滅多にないものと思われます。私たちもご多分に漏れず、6年前、いっしょに暮らし始めた矢先に「できてしまった」のでした。それまで、予定に反して「できて」しまったケースなどを聞くと、「なぜ避妊しなかったんだろう」「自分の体に責任を持たなくては」「私はそんな『失敗』はしない」とタカをくくっていたのに、この有様でした。
当時、仕事も自分のやりたい分野から依頼が来つつあり、習っていた琉球舞踊(私は「沖縄病」※にかかっています)の舞台も控えていて、「今妊娠すること」はとてつもなく「困る」ことでした。
それに加え、私は長年アトピーを患っており、そのためステロイド外用薬などを使っており、「ひょっとして『異常』な子どもが産まれるかも…」という不安。私たちはいわゆる「事実婚」なわけですが、「子どもは非嫡出子になるのか…」というやりきれなさがどっと押し寄せてきたのでありました。妊娠する前のこれらに対する答えは明確で、「『障害』のある子どもだって一つの生に変わりはない。存在価値はある」「非嫡出子なんて言葉自体おかしい。どんな子も生きる権利がある」と思っていました。が、しかし、いざ「自分の子」となると、疑いもしなかった信念がいとも簡単に揺らぎ始め、「なるほど、障害児が差別されたり、事実婚カップルの子どもが増えないわけは、こういうことであったか!」と、目からうろこが落ちたのでした。一つの生命が宿ることとは、すなわち感情に左右されたり理屈じゃどうしようもないことと立ち向かうということでもあったわけです。
この後、押し寄せた不安を連れ合いに正直に話したところ、「二人の子どもに間違いないんだし…『障害』があったらおろすっていうの…」「二人で事実婚にしようと決めたんだから、とりあえず子どもに説明してみて、子どもの気持ちも聞いてみればいいんじゃないかな…」としごくまっとうな冷静な答えが返ってきて(サスガおとこ)、ハッと我に返ったのですが。
しかし、こんなことはまだ序の口、これから感情に左右されたり理屈じゃどうしようもないことが次々と押し寄せてきて、弱い私を再確認していくのでした。(つづく)
※沖縄病
沖縄にかぶれること。沖縄を訪れた旅行者が発病する。帰っても、周りに沖縄はいいよと脈略もなく話しかける(「おきなわキーワードコラムブック」より)」