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こうみそだて その6 「アトピー地獄のはじまり」
こうみそだて その6 「アトピー地獄のはじまり」
▲こうみそだて


 
 「三ヶ月ごとに子育ては楽になっていく」とは、どこに書かれていたものだったか。雑誌だったのか、書籍だったのか、新聞だったのか定かではないが、まさにこの言葉どおりで、あんなに髪振り乱し、やつれ、半分ノイローゼ状態になっていた私であったが、砂をかむような三ヶ月が過ぎると、グンと子育てが楽になった。四六時中赤ん坊の世話に明け暮れるのは変わりがないのだが、それでも夜と昼の区別がついて夜数時間まとまって寝てくれるようになったし、ミルクやおっぱいの時間も決まってきて、なんとなく一日のリズムがつかめてきたのだ。こうなると、中断していた仕事も始めたくなる。さっそく、無理のない範囲で、フリーで再開してみることにした。4月から、区のベビールームに入所が決まったのも幸いした。

 4月になった。11月に出産して5ヶ月。あんなに、子どもとの生活がつらかったのに、いざ預けるとなると、心配でしかたがない。最初は、「慣らし保育」といって1時間だけ、次の日に2時間、3時間と延ばし、一週間くらいかけてほぼ9時から5時くらいまで預かってもらえるようになる。初日は、この1時間のあいだに、なにもできなかった。子どもをたった1時間、他人に預けることがこんなに不安になるなんて思いもよらなかった。泣いていないだろうか、ミルクは飲んだのだろうかと、狭い家の中をウロウロして時間が過ぎてしまった。1時間が過ぎ、早く会いたくて、この手にわが子を抱きたくて、不覚にも駆け足で迎えに行ってしまった。帰宅すると、いつもと違うところに行かされてきた娘はキョロキョロと落ち着かず、泣いたり、おっぱいをねだったりして、「やっぱり、親が育てるべきなのか…」と迷ったりした。母親もつらい。

 このとき、働く女性が出産を機に仕事を辞めしまうことも、体感できた。もちろん、保育園の枠がないということもあるが、ずっと一緒にいるとやはり情が移るもので、ましてや自分の子どもとなれば、離れること自体がつらくなる。子どもも、いつも身近にいる母親を認識して、一番愛情を見せてくれるようになるかわいい時期だ。私のように、ノイローゼ気味のけっして見本にならない母親でも、無条件で一番に愛してくれるのである。そんなかわいい子どもと離れるなんて…という働く母親がいても全然不思議ではない。もし、0歳児でベビールームに入れなければ、私だってなし崩し的に子育て一辺倒になってしまったかもしれない。保育園の、0、1歳の枠が極端に少ないのも、こんな母親の心理をよくわかっていて、今預けるところがなければ育児に専念するだろう…というのが、国の狙いだったんだ!!とマジで納得したりした。

 が、また、このつらいいっときを、お互いに過ぎてしまえば、あとはペースができてストレスなく親子の暮らしを満喫できるものなのだ。私も、それまで封印していた仕事や趣味に対する思いが一気にあふれて、やはり「自分」を生きることは楽しいと実感したし、仕事が終われば子どもと一緒に何して遊ぼうか…と嬉々として迎えに行くようになった。

 ベビールームでの生活も二ヶ月、三ヶ月と過ぎ、仕事と子育てとちょうどいい具合にバランスが取れてきていた私は、もう一つ気になっていたことを、いよいよ実行に移すときだと心に決めた。アトピーを根本から治すことである。思春期のころ発症してはや二十年近く――。それまで、よくなったり悪くなったりを繰り返していて、ここ十年くらいはステロイドのお世話になっていたのだ。しかし、妊娠中から薬が使えず、ひどい状態になっていたこと、また出産後半年を過ぎて再び使っても効き目がなくなってきたことに不安を覚えてもいた。ライターという職業柄、ステロイドの害についてはいろいろ聞いていたが、うまく調節して使えば平気かもしれない…などと自分をだましつつ使い続けてきたツケを一気にはらおう、ステロイドを使わずに治してみよう、そう漠然と思い立ち、本で調べたF皮膚科に通い始めた。F先生は、とてもおおらかな人で、「大丈夫。きっと治るから」と楽天的におっしゃった。

 しかし――それからが大変だったのだ。今までアトピーが出ていなかったところにも症状が出始め、全身症状が出てしまったのだ!! 頭の先から足の先まで、体中、痒くてたまらず、夜も寝られない。食事もできない。夏なのに寒くて長袖でないといられない(ステロイドによって自律神経がイカレてしまったらしい)。皮膚は、パラパラと剥がれ落ち、掻いたところからは滲出液がにじみ出て、乾くとパリパリしてはがれて、また掻く…という繰り返し。色素沈着で肌は真っ黒。夜眠れないから、朝が起きられない。それでも無理して起きると、パラパラと落ちた皮膚のくずと、染み出た滲出液と血液で、パジャマはぐしょぐしょ。このまま廃人となり死んでしまうのではないかと心底怖くなった。これまでの、どちらかといえば平凡な人生のなかで、最大の危機が訪れようとしていた。

 子どもがようやく10ヶ月、夏のことであった――。(つづく)
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