こうみそだて その17 卒園!!
ついに、この日がやってきてしまった。そう、卒園式である。思えば、よちよち歩きの一歳のときから五年間、起きている時間の半分以上は保育園で過ごしていたことになる。もう、第二のふるさとみたいなものだ。アトピーで卵が食べられなかったナミも、三歳からようやくみんなと同じバースデーケーキを食べられるようになった。初めての保育園お泊り、一泊のキャンプ、オロオロしたのは親だけだったっけ。気の強い子に泣かされていたナオも、なんとか自己主張できるように鍛えられてきたなあ。それにしても、雨の日の登園・お迎えは本当に大変だった。とくに、シーツやら着替えやらの荷物が多い月曜や金曜だったら最悪、あまりにすごい雨で、しばらく園で雨宿りしたこともあったなあ。帰宅途中に事故で電車が止まり、携帯も普及していないころで、遅れたらどうしようとあわてた、あわてた…。そんな日々のできごとが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
きっと号泣…いやな予感。そう、じつは、一年前の卒園式に、四歳児の役員代表として出席したのだが、知っている子どもも多かったので(4、5歳児はわりといっしょに行動することが多かったので)、「ああ、あの子も小学生かあ」と思うと人様の子ながらよくここまで大きくなったと感激して、涙が流れ、嗚咽を抑えるのに必死だったのだ。来年は、ナミもああなるんだと思うとこらえきれず、次から次へと涙が出てくるのであった。
今度はいよいよ自分の子の卒園式である。号泣必死だと思われたのだが、意外や意外、私は去年の人様の卒園式のほうがはるかに泣いたのであった。なぜなら、きちんと卒業証書を受け取れるのか、とか、大きな声で返事ができるのか、とか、寒い日だったので途中でトイレに行きたくても言い出せず、もしや一張羅でおもらし?などと、あらぬ心配が次から次へと頭の中を駆け巡り、泣くどころではなかったのである。むしろ、お客様でいた去年の卒園式のほうが、じっくりと雰囲気に浸れる余裕があったというわけだ。そういえば、去年も、来賓席にいたほかのお母さんは私と同様に泣いていたが、反対側にいる卒園生の親たちはあまり泣いておらず、不思議な気がしたのだった。
それでも、先生が一人ひとりの子どもの思い出を語り、「い〜つの〜こと〜だか〜思い出してご〜らん〜♪」のバックミュージックが流れ、担任だった男の先生がこらえきれず泣く姿を目にして涙腺が切れてしまった。保護者席のあらかたが、この瞬間に泣いたようである。やはり若い男の涙に母親は弱いようだ(←父親は冷静)。
ナミも、緊張しながらもきちんと返事をし、立派に卒業証書を受け取り、一張羅をおしっこで汚すこともなく、無事、式は終わった。帰りにみんなで記念写真を撮った。思い出話に花が咲き、いつまでも尽きることがない。プレゼントは、一歳から五歳までの毎日の記録帳だ。大きな紙袋一つはゆうにある量。先生ももちろんだが、親の私もよく書いたものだと我ながら感心する。思い出いっぱいにつまった記録帳――我が子が、本当にたくさんの大人たちに見守られてきたという幸せ。この先、なにがあっても、乗り越えていけそうだ。そう確信しながら、園を後にするのであった。(つづく)