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こうみそだて その21 鉄棒と水泳 
こうみそだて その21 鉄棒と水泳 
▲こうみそだて


 

■はじめに   By くまこ
 子育てをめぐる書物は世の中にうんざりするほど出ているわけで、有名な先生から一介の主婦まで様々な視点で書かれており、「もう十分」と思っている人も多いだろう。しかし、子を産み育てる当人にとっては、日々これ発見なわけで、この「発見」を人に問うて見たいという気持ちは誰にも止められない。とゆーわけで、私も一人の子を産み育てつつあるなかの「発見」を、この「いまどこ」紙上(※)を利用して同世代の皆さんに問うてみたいと思っています。

※「いまどこ」 2002年11月創刊。現在休刊中。基本的に30〜40代の人たちに、毎月お題を振って自由に語ってもらうフリーペーパー。「こうみそだて」は「いまどこ」に毎月連載していたものです。

写真 はじめての家庭訪問で、娘の意外な一面を知った。
「そう、そう。ナミちゃん、鉄棒だけはどうしてもやろうとしないの…。なにかあったのかな?」と先生が言ったのである。それまで、学校でのできごとをよく家庭でお話ししていますね、恥ずかしがりやなところもありますが授業中積極的に手を上げています、学童に行っているのでお友だちもすぐに出来て楽しそうだ…と、とくに問題はありません、ということであった。しかし、「では…」と席を立とうとしたとき、思い出したように鉄棒の話が出たのである。「へぇー、そうですかあ」私は授業で鉄棒をやっていることさえ知らなかった。学校であったことをいろいろ話してくれるのに、なぜだろうと不思議だった。先生は、「少しずつ慣れますよ」と言って帰っていった。

その日の夕方、学童から帰ったナミに鉄棒の事を聞いてみると、「だって、ナミ、できないんだもん…」と言って、しくしく泣き出したのである。別に怒ったわけでもなく、「体育で鉄棒やるんだって?」と聞いただけなのにびっくりした。「出来なくたって恥ずかしくないよ。今度お休みの日にいっしょに練習しよう」というと、「できない」「やだ」と言って泣いている。けっきょく、なんとかなだめて、その日この話はしなかった。

友人にこの出来事をしたら、「きっとナミちゃんのプライドが傷ついたんじゃない?」という。それまで順風万帆に行っていた小学校生活に「鉄棒が出来ない」という「ミソ」がついた。これが自分でも許しがたく、しこりとなって、親に話せなかったのではないか…というのである。「そんなバカな!!」と思う私。親にまで見栄張ってどうする?という感じなのだが、一番身近な人にはかえって「負」の部分は見せたくなかったということか…。そういう感情がこの年でも育ってきているんだと思うと、別の意味で成長したなあと思わずにいられない。それまで、失敗したことでも屈託なく話していたのに、急に知らない娘の一面を見た気がした。

これと同様なことが夏休み中もあり、なんと水泳検定の日に「どうしても行かない」といって休んでしまったと学童の先生から聞いたのである。「出来なくてもいいから、参加だけすればいいから。一年生で泳げなくてもちっとも恥ずかしくないよ」と散々言い聞かせたのに、休むなんて…。さすがにこの日は頭にきて、「ひきょうなことをしてはいけない!!」と長々とお説教して、ピアノのお稽古にも遅れてしまったほどだ(←ナミはワンワン泣いていた)。

しかし、「どうしてもやだ」という頑固さと「できない」という恥ずかしさがこれほどある子だったとは、はじめて知った事実だった。犯罪を犯した子どもの親が「まさかウチの子が」と青ざめているのと同じだ。親の知らない面、親に知られたくない面。子どもだっていろいろと「抱えて」いるのだ。そろそろお子様扱いできないな。はぐらかさずに、真剣に向き合っていかないといけないな。気持ちを新たにした出来事であった。(つづく)
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