こうみそだて　その２４　「ＰＴＡはじめてものがたり」③

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■はじめに　　　Ｂｙ　くまこ
　子育てをめぐる書物は世の中にうんざりするほど出ているわけで、有名な先生から一介の主婦まで様々な視点で書かれており、「もう十分」と思っている人も多いだろう。しかし、子を産み育てる当人にとっては、日々これ発見なわけで、この「発見」を人に問うて見たいという気持ちは誰にも止められない。とゆーわけで、私も一人の子を産み育てつつあるなかの「発見」を、この「いまどこ」紙上（※）を利用して同世代の皆さんに問うてみたいと思っています。

※「いまどこ」 2002年11月創刊。現在休刊中。基本的に30～40代の人たちに、毎月お題を振って自由に語ってもらうフリーペーパー。「こうみそだて」は「いまどこ」に毎月連載していたものです。

　面倒見がよく、細かいところまでよく気がつく人――よい人には違いないが、時として困ることもある。とくに、前任のＰＴＡ副会長がこのタイプの場合は…。
　引継ぎで、Ａ４判・厚さ五センチのファイルを二冊渡されて心底ビビッた私であるが、なにしろ熱心な前任者Ｕさんの説明に片時も目と耳をそらすことができない。引継ぎは３時間にも及んだ。なぜなら、私はクラス役員すら引き受けたことがなく、ＰＴＡ組織そのもののレクチャーから受けなければならなかったからだ（ＰＴＡ＝Parent Teacher Associationの略だということから！）。加えて、このあとすぐに開かれるＰＴＡ５月総会および職員の歓送迎会を控え、その具体的な仕事も引き継ぐ必要があったからなのであった（ガーン！！）。
　トボトボと足取り重く家に着いて、ファイルをパラパラとめくってみる。正直、なにがなんだかさっぱりわからない。このすべての文書や資料を私一人で作るのか…。ため息をひとしきりついて、ファイルを押入れにいれ、パタリと戸を閉めた。考えてもしょーがない。やるっきゃない（←おたかさん？）。とにかく寝よう！（←意味不明）本当に昼寝してしまった私であった。

　５月総会というのは、いわゆるその年のＰＴＡ活動計画と予算案報告が主で、シャンシャン総会と言っていい。たいていは質疑応答もなく滞りなく終わる。大変なのはその後行われる歓送迎会だ。ただ、去る先生への記念品贈呈、新任の先生紹介で終わり、ではない。地域密着型、地元町会とも結びつきが深い学校ならではの「派手」な一大イベントなのだ。ケータリングの食事あり、テーブルに花のブーケあり、ビールあり、記念品あり…地元の区議会議員から町会長、歴代のＰＴＡ会長、それに加えて教職員と父母たちの参加で、毎年７０名以上もの出席になるらしい。しかも運の悪いことに、今年は例年になく先生の異動が多く、それだけ手間がかかりそうだ。来賓への招待状作りだの、プログラム作りだの、食事とビールの手配、席順決めなど、いくらでもやることはある。ＧＷ明けには毎日のように学校へ顔を出さざるを得ない感じだ。しかも、年寄りが多いので、オードブルはパイ系のものだとボロボロこぼすし、のどにつまらせるのではないかとか、この人とこの人は仲がよくないから席を離すとか、まあ子ども以上に大人の対応は面倒なものだったりする。なんと、たかが席順決めに２時間かかり、ゲッソリの私であった（しかも、それでいいか、教頭先生に許可を取る作業が残されている…）。

　当日は、テーブルセッティングから受付、ケータリングの手配などでしっちゃかめっちゃか。加えて、今年度のＰＴＡ副会長として、お歴々の面々にビールをついで回らなければならない。目の前においしいご馳走があるのに、まったく食べられない状況だ。ようやく少し席に着くことが出来ると、担任の先生やクラスのお母さんが「ご苦労さま～」とねぎらってくれた。「二年生のお母さんをあまりこき使わないでね～」と二年生の先生がふざけて会長に言ってくれた。場を和めてくれる思いやりに感謝しながらも、つまんだオードブルもまったく食べた気がしないし、こんな調子で一年間やっていけるのだろうかとただただ不安で、作り笑いをするのが精一杯の私であった。

こんな調子で一年続くのかと思うとぞっとする私であった…(つづく)

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